先日、着信履歴に懐かしい人の名前がありました。
「ナカタニさん」
ウチが長年お世話になった、トマトの生産者です。
ナカタニさんはトマトのカリスマ生産者。メディアにもよく紹介され、多くの見学者がナカタニさんの作り方を学びに来ていました。
でも、寄る年波には勝てず、ここ数年は身体よりも脳(認知)の面での衰えが進み、頼んだのに届かない、忘れることが多くなり、入荷がストップしていました。
久しぶりに入った着信履歴に、ボクはドキッとしました。
不遜にも、「訃報」かと思ってしまったからです。
恐る恐るかけてみると・・・・・。
「おう!多賀さん! 久しぶり! なんかあったんか?」
どうやら、何かの手違いで、ボクの所にかけてしまったようです。
「懐かしい声や! よう覚えてる! 結婚する言うて嫁さん連れてきてくれたな!」
懐かしい昔話に花が咲きました。
ボクのような小さな店にナカタニさんのトマトを回してもらえてた事が、そもそも奇跡です。
ナカタニさんは、ウチのブランド力向上の最大功労者の一人です。
「多賀さんとこの物は何でも美味しい!」とお客様に褒めてもらえるようになり、ナカタニとまとファンがたくさん生まれました。
出会いは、四半世紀も前になります。
忘れられません。
仲間のバイヤー2人と一緒に、和歌山のビニールハウスに行き、廃車マイクロバスの座席で商談しました。
座席は向かい合わせでないので、体をねじりながらやりにくい商談だったと覚えています。
試食にと切ってもらったトマト。
「包丁ないんや!」と錆びたカミソリの刃で切ってくれました。
「汚いな~。もう嫌や!」と思いつつ、口にしたトマトの味は今でも鮮明に覚えています。
感動しました!
ビックリする深い味わい!甘い!濃い!
神戸から来たバイヤーはトマト嫌いでしたが、「こんなうまいトマト知らん!」と驚いていました。
あの劣悪な「おもてなし」からの「びっくり味」は強烈なサプライズでした。
トマト生産者の中では、味で第1人者の有名人だったことは後から知りました。
ウチみたいな小さな店とは「格」が違うのに、対等にお取引してくれたナカタニさん。
人柄と人情と縁とで心が通じ合っていました。
お客様に書いてもらった「ナカタニさんへ、いつも美味しいとまとありがとう」の寄せ書きを嬉しそうに眺めていました。
「あと何回ナカタニさんと話ができるかな?」
さみしくて切ないですが、そんな気がして胸がキュンと詰まりました。